最近のデジカメには、ほとんどの機種で「手ぶれ補正」の機能が搭載されています。
また、デジタル一眼レフなどの交換レンズにも、「手ぶれ補正」の機能が搭載されているものが多くなりました。
手ぶれ補正機能とは
デジタルカメラを三脚などで固定せず手持ちで撮影しているとき、撮影時にカメラが動いてしまって、ぶれた写真になってしまうことがあります。
もう少し具体的に言うと、撮影している時間-シャッターが開き始めて閉じ終わるまでの時間-に、カメラの中の撮影センサーが動くとぶれた写真になってしまいます。
こうした「ぶれ」の影響を少なくするのが「手ぶれ補正機能」です。
よく誤解されるのは、「手ぶれ補正がついているからぶれない」というもの。カメラを動かしながら撮ってブレブレの写真が写されてしまい、変だなあと思われる方もいらっしゃるようです。(なかにはお店のデジカメコーナーでカメラを手で振りながら撮影して「あれっ、ぶれてる?」という方も)
でも、手ぶれ補正機能は「ぶれをなくす」ものではありません!
カメラを慎重に構えて撮っても生じてしまうブレを「軽減」するものです。
○段分の手ぶれ補正ってどれくらい強力なの?
手ぶれ補正機能の効果は、よく「○段分」という形式で表現されます。
これって、カメラや写真に詳しくない多くの方にとっては、わかりにくい表現かもしれません。実は、私も「○段分?」と思っていました。
カンタンに言うと、この「○段」って「2倍」のことなんです。「1段分」というと「2倍」、「2段分」は「4倍」、「5段分」は「32倍」です。
1段…2倍 2段…2倍×2倍=4倍 5段分…2倍×2倍×2倍×2倍×2倍=32倍
といった感じになります。
で、この2倍はどういう意味を持つかというと、「シャッタースピードを2倍にした状態と同等の効果」という意味を持っています。
たとえば、「シャッタースピードが1/10でブレてしまうけれど、1/20だとブレない」という状況で、効果が1段分の手ぶれ補正機能を使うと「シャッタースピード1/10でも、シャッタースピードを1/20にしたときと同等になってブレない」という効果があります。2段分だと、「1/6」でも計算上はブレませんね。
ただし、「手ぶれ」がゆっくりした動きなのか細かい動きなのか、横方向のブレなのか前後方向のブレなのか、などによって効果のほどは違ってきますから、撮影状況によっては必ずしも単純にスペックどおりの効果があるわけではありません。
手ぶれ補正の原理
手ぶれによって、たとえばカメラが左に動いたら、次のような方法でぶれを打ち消すことができると考えられます。
1 イメージセンサーの撮影領域の中で、一部分だけを使うことにしておいて、カメラが動かなかったら真ん中の部分を使い、カメラが左に動いたら右の部分を使う。
2 レンズ内で光の屈折の仕方を変えて、カメラが左に動いてもイメージセンサーの同じ位置に光が当たるようにする。
3 イメージセンサーそのものを動くようにしておいて、カメラが左に動いたらイメージセンサーを右に動かして被写体からのセンサーの位置が変わらないようにする。
手ぶれ補正の種類
手ぶれ補正機構は、大きく分けると「光学式」と「電子式」とがあります。
電子式
電子式は、イメージセンサーから得られた画像の一部分だけをトリミングして使い、ブレを目立たなくする方法。具体的には、センサーでブレを感知したら、その手ぶれを打ち消すようにトリミングする位置を動かして記録する方式です。(※他に「2枚の画像からブレを判断して画像処理を行う」といった方法もあります)
メリットは、構造が簡単で安く作れることですが、イメージセンサー全体を使わないので画質が劣るというデメリットもあります。また、センサー領域の一部を使うため、全体を使う場合に比べて画角が狭くなるという影響もあります。(たとえばオリンパスのE-PL3は動画撮影時に手ぶれ補正機能を「on」にすると望遠側にズームしたような画像になりました)
一方の光学式は、実は、さらに大きく二通りの方法に分けられます。
レンズシフト式(光学式)
ひとつは、レンズ内(「レンズユニット」内)のいくつかのレンズを動かして手ぶれを補正する方法。「レンズシフト式」などと呼ばれています。
この方式だと、一眼レフでファインダーを覗いたときに手ぶれ補正の効果が実感できます。プルプル震えるように見えていたものが、ゆら~りと動いて見えて、フレーミングが格段にしやすくなります。
また、それぞれのレンズに最適なユニットを組み込むことで、4~5段分などの高い手ぶれ補正効果が期待できます。
ただし、1本1本のレンズごとにユニットを組み込むため、レンズ価格が高くなり複数のレンズを買うとかなりのコストアップになってしまいます。また、手ぶれ補正機能のないレンズに比べて、大きく重いレンズになりがちです。
センサーシフト式(光学式)
もうひとつは、イメージセンサーを動かして手ぶれを補正する方法です。
後者については、最近まで「光学式」という言葉は使われていませんでした。むしろ、「ボディ内手ぶれ補正」という言葉を使うのが一般的でしたが、最近は「光学式」というネーミングが使われ始めました。
この方式だと、基本的にどのレンズを使用しても手ぶれ補正効果が期待できます。古いレンズを使いたい場合など、有効な手ぶれ対策になりますね。
ただし、一眼レフの光学ファインダーにおいては、手ぶれ補正の効果が実感されにくいというデメリットもあります。(ミラーレスカメラなどのEVFでは効果が実感できると思います)
なお、イメージセンサーを動かすというこの方式の技術を応用して、画像の傾きを自動的に補正したり、「ローパスフィルター」の代わりにセンサーを動かして同じような効果を実現した「ローパスセレクター」などの機能を持つ機種もあります。
そのほか
「レンズユニットやイメージセンサー全体」をひとつのユニットとして、そのユニットそのものを動かすSONYの「空間手ぶれ補正」という方式もあります。(※ビデオカメラで使われています)
また、光学式と電子式を組み合わせた「ハイブリッド手ぶれ補正」というのも、コンパクトデジタルカメラでは使われています。
どの「手ぶれ補正方式」が優れているのか
一概に、どの方式が優れているとは言いがたい部分があります。
電子式よりも、光学式の方が優れているとはよく言われますが、これもコストとの兼ね合いもありますし。
光学式の中では、「レンズシフト式」は望遠側で効果が高いという感想を読んだりします。ファインダー像に反映するという点でも、望遠撮影時にはこの方式がメリット大だとは思います。ただし、電子ファインダーの場合には「ボディ内手ぶれ補正」でも同じようにファインダー像で効果が実感できます。
ただ、最近流行の「5軸手ぶれ補正」において、「回転方向のぶれ」についてはセンサーシフト式の「ボディ内手ぶれ補正」でないと対応は難しいようです。
方式 | レンズシフト式 (光学式手ぶれ補正) |
センサーシフト式 (光学式手ぶれ補正) |
電子式 |
補正方法 | レンズユニット内の 一部のレンズなどを動かす |
イメージセンサーそのもの を動かす |
全体の画像情報から 一部をトリミングなど |
メリット | 光学ファインダーで 効果が確認できる |
基本的にどのレンズでも 古いレンズにも対応できる 回転ぶれにも対応できる |
コストが安い |
デメリット | レンズの数だけ 補正ユニットが必要 (結果的にコスト高に なりやすい) |
液晶モニターやEVFなら 効果が確認できるが 一眼レフの光学ファインダー では効果が確認できない |
画像情報の一部を使うため 画質的に不利 複数画像から補正する方式 は基本的に動画にのみ対応 |
コンパクトデジタルカメラにおいては、どの方式でも液晶モニターで効果がわかると思いますし、機種ごとに効果はまちまちでしょうから、カタログスペックの「○段分」を参考にデジカメ選びをするといいのではないかと思います。
手ぶれ補正の効果が高いデジタルカメラ
まず、一眼レフですが、ニコンとキヤノンは「レンズシフト式」なのでどのカメラを使っているかというよりも「どのレンズを使うか」によって手ぶれ補正の効果が違います。
シャッター速度約4段分
EF16-35mm F4L IS USM
EF70-200mm F4L IS USM
EF70-300mm F4-5.6L IS USM
EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×
EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM
EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM
EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS
EF-S55-250mm F4-5.6 IS II
AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR
AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II
AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR
また、ペンタックスはボディ内の手ぶれ補正ですが、公式サイトによると次のように記載されていました。
Pentax K-3
手ぶれ補正方式は?
回答 ボディ内撮像素子シフト方式です。
どの程度(シャッター速度何段分)の手ぶれ補正効果がありますか?
回答 3.5段です。
※CIPA規格準拠 [f=135mm (35ミリ判換算f=207mm)、smc PENTAX-DA18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR使用時 ]
Pentax K-5II
どの程度(シャッター速度何段分)の手ぶれ補正効果がありますか?
回答 シャッター速度換算で約3EVの補正効果があります。
※手ぶれ補正の効果は使用するレンズの焦点距離や撮影距離、撮影状況、また、個人差もありますので一定ではありません。
次に、光学ファインダーを持たない「デジタル一眼」のうち「ボディ内手ぶれ補正」の機種。
OLYMPUS OM-D E-M1
5軸手ぶれ補正機構(シャッター速度4段分補正)を搭載
OLYMPUS OM-D E-M5
5軸手ぶれ補正機構(最大5EVシャッタースピードで最大約5段分)を搭載
OLYMPUS OM-D E-M10
3軸手ぶれ補正機構(シャッタースピードで最大約3.5段分)を搭載
OLYMPUS PEN E-P5
5軸手ぶれ補正機構(最大5EVシャッタースピードで最大約5段分)を搭載
SONY α99
シャッタースピードで約2.5-4.5段(撮影条件・レンズにより異なる)